1) 胸骨圧迫の解除(リコイル)がなぜ大切なのか?について

ACLSのテキスト19ページの図13をご覧下さい。

心臓に酸素や栄養を届ける血管は冠動脈でした。
自己心拍再開(ROSC)するためには、十分なCPP(冠動脈灌流圧)のレベル、グレーのラインを越さないとROSCは難しいと言われています。
冠動脈に血液が流れるタイミングはいつだったかと言うと、拡張期のタイミングでしたね?
胸骨圧迫をした時に脳や他の臓器に血液を送り出し、圧迫解除したタイミングで冠動脈に血液が流れます
故に、ROSCさせるためには、圧迫解除がとても重要となります。

BLSはベーシックなので、成人であれば少なくとも5㎝以上の胸骨圧迫、という幅広く適応できるように平均化された数値でした。
しかし、ACLS(A:アドバンス)になると、その人にとっての適切な胸骨圧迫の深さという概念が出てきます。
そうですよね?
大人であっても体格差があります。細い方もいれば、お相撲さんのような方もいるのに、同じ5㎝で良いのか?というところです。

そこで、冠動脈灌流圧が心拍再開と相関しているわけなので
冠動脈灌流圧を 15mmHg より高いレベルに保つことが、質の高い胸骨圧迫の要件ということになります。

しかし、冠動脈の血圧は残念ながら測定できません。そこで、ACLSプロバイダーコースの中では代理指標という考え方が出てきます。
テキスト21ページの「C」循環の箇所や、テキスト126ページに記載がある【呼気終末二酸化炭素】【大動脈拡張期圧】というところです。
そのため、挿管したら、カプノメーターを装着したり、もしAラインが入っている方なら、拡張期圧が 20mmHg 以上になるように胸骨圧迫を調整します。
これらはACLSの部分になりますので、当日、詳細な説明がありますので、ご安心下さい。

2)過換気が良くない理由について

ACLSのテキスト102ページの重要な概念をご覧下さい。

過換気は胸腔内圧を上昇させてしまいますが、どうして胸腔内圧が上昇すると良くないのでしょうか?
BLSの際は、食道に空気が入ってしまうため、嘔吐・誤嚥、窒息のリスクが増えること、静脈還流減少するため結果的に良くない。
その程度の説明だったと思います。

以下は全く覚える必要はありません。
こんなに色々と原因があって、過換気が良くないんだなとお読みいただければ大丈夫です。

冠動脈灌流圧の低下と静脈還流量減少により心拍出量が減少
 胸腔内圧上昇 → 静脈還流低下+心臓が拡張しにくい → 心拍出量低下+冠灌流低下 →心拍出量減少により死亡率上昇

・肺胞過伸展によって、毛細血管が圧迫され肺血管抵抗が高くなります。
 その結果、肺から血液に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。

・肺から漏れ出た空気が食道へ流入してしまうことで、嘔吐・誤嚥・窒息のリスクが増えます。

・脳血流量の低下
 血液中の二酸化炭素濃度が減少↓すると、血液がアルカリ性に傾くため、脳血管が収縮し脳血流量が低下。

上記のような弊害があるため、質の高い人工呼吸をするためには過換気にならないように注意が必要となります。

そもそも、質の高い胸骨圧迫を行っても、生み出される血液量は正常の1/3~1/4程度と言われています。
肺胞内に取り込まれた酸素を血液に溶け込ませる際、ガス交換を効率よく行うためには、換気量と血流量のバランスが一定であることが理想的です。
そのため、血流量が通常の1/3~1/4程度なのであれば、送り込む空気量も通常の1/3~1/4程度が望ましいということになります。

3)心停止の4つの種類について

心停止というと、心電図モニターがフラットな状態である「心静止」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、心停止の種類は4つあります。

1)心室細動(しんしつさいどう):大人に多い心原性の心停止
2)無脈性心室頻拍
(むみゃくせいしんしつひんぱく)
3)無脈性電気活動
(むみゃくせいでんきかつどう):子供や院内で多いとされる心停止
4)心静止
(しんせいし)

AEDが「ショックが必要」と判断する波形は上の2つ。
心室細動(VF)と無脈性VTでした。

ACLSでは、ショックが一番の治療であるVFと無脈性VT、ショック適応ではない心静止とPEAに分けてアルゴリズムが展開していきます。(テキストP174・P175 )
アルゴリズムだけ見ると難しく感じますが、ここは実際に練習することで身に付きます。


最後に

BLSでもありました【高い能力を持つチーム、チームダイナミクス】を覚えていらっしゃいますか?
ACLSでは、チームで蘇生していくので、ここの練習が大切となってきます。

自己の限界ってありましたよね?分からなければメンバーに聞き、相談して答えを導きだせればOKです。
建設的な介入で、リーダーが忘れていそうだな?と思えば、メンバーが助け舟を出してあげれば良い方向に向かいます。

当日、初めましての方同士かと思いますが、有難い事に弊会に来て下さった方はとても素敵な方ばかりですのでご安心ください!
何かご不明な点があれば、私にとっても勉強になりますので色々と聞いて下さい。
それでは、チームで助け合って、より良い講習にしていきましょう!!

皆さまにお会いできるのを、本当に楽しみにしております。