・はじめの前置きとして

コロナの影響もあり、CPR(心肺蘇生法のこと)をする際は
「ハンズオンリーCPR(人口呼吸のない胸骨圧迫だけの心肺蘇生法)でよくなった」

と思われている方が医療従事者であっても少なからずいらっしゃいます。

皆さまは、この件についてどのようにご理解されていますか?
・人工呼吸が不要になったのか?
・人工呼吸ができないのは仕方がないのか?


倒れている傷病者を発見し119番通報をした場合、
駆けつけた救急隊員が人工呼吸をしないということはあり得ませんよね?

バイスタンダー(通りすがりの人)であれば、心づもりも感染防護具もなくて当然ですから、
人工呼吸ができないのは仕方ないかもしれません。

ハンズオンリーCPRでも、してくれただけで本当にありがとうございます!という【善意の救助】です。

そのため、民法や刑法では、悪意や重大な過失がなければ、責任を問われることがないと考えられています。

しかし、それが院内の場合ではどうでしょうか?
心停止の患者さんに人工呼吸をするのに10分も遅れ、低酸素脳症になったとなれば、訴訟されてもおかしくない案件です。

実際に、過去に診療所で救命処置の際、
人工呼吸をしなかったことが「業務上の過失認定」とされ、診療所に6100万円の賠償命令が出たこともありました。

また、救護義務者である学校教師や保育士さんなども
適切な救命処置が出来ていなかったことで、訴訟されるケースも後を絶ちません。

では、本気で我が子を助けたいと思っている親に対してはどうでしょうか?

人間も生物なので、外部から色々な物を取り込んで生きています。
生物として生きるために必要不可欠なものを3つあげて下さい!と言われたら…パッと浮かびますか?

ざっくりですが 【栄養素】【水】【酸素】
この3つを使い、人は生きています。

私たちはエネルギー産生をし続けなければ生きていけません。
栄養素と酸素が反応することでエネルギーが産生されます。
栄養分は、お腹の脂肪など身体に蓄えておくことができるので、人間食べなくてもすぐには死にません。

山で遭難、海で難破した人の記録等を見ると、1カ月弱、3週間くらい持つとも言われています。

水も、極度の脱水状態、出血多量など例外もありますが、1時間や2時間水分をとらないからといってすぐには死にませんよね?

ただ、酸素はどうでしょうか?

息をしないと、人はどのくらいで死んでしまうかというと、人は酸素がないと【分単位】で死んでしまいます。

目の前で急激に人が命を落とすとしたら…

それは【酸素不足】

私たちの身体は、酸素をストックできる臓器がありません。
私たちは意識的にも無意識にも、寝ている間もずーっと24時間365日呼吸し続けて生きています。

そう考えると「心肺停止状態の傷病者に人工呼吸が不要になった」
という冒頭の文章が、いかにおかしなことかがお分かりいただけるかと思います。

人が生きていくためには、酸素は必要不可欠であり、
人工呼吸が不要になったことは一度もありません。

立場や状況によって人工呼吸が遅れてしまっても仕方ないケースがあるということです。

・上記前置きをふまえ考えていただきたい事項

前置きをふまえ、下記事項についてテキスト参照やインターネット検索など、方法は問わず情報を集め考えていただければ幸いです。
課題ではなく、ご提出いただく必要もございません。

1.成人と小児の基本的な心停止の原因の違い(心原性or呼吸原性?)と、それぞれの心停止に至るまでの経過(時間的変化)を考えてみてください。


2.AEDは何をする機械か?
また、AEDが判断できることは、①~⑥のうちいくつあるでしょうか?

  ①反応がある/ない
  ②呼吸がある/ない
  ③脈拍がある/ない
  ④心臓が正常に動いている
  ⑤心臓の動きが止まっている
  ⑥心肺蘇生法が必要かどうか


3(医療従事者向け設問).心停止の種類を4つ挙げてください。
そのうちAEDが「ショックが必要」と判断する心停止はどれでしょうか?
(※この先ACLSについても学びたいと思っている方はぜひ考察してみてください!)