・各設問のヒントと補足説明

※かなり端折った大枠の説明となりますので、まずはイメージで理解していただけたらと思います。

【1.成人と小児の基本的な心停止の原因の違い(心原性or呼吸原性?)と、それぞれの心停止に至るまでの経過(時間的変化)を考えてみてください。】


成人の心停止は、異常な心リズムの不整で起きる「心原性の心停止」である心臓突然死(突発的な心室細動:Vf)が多いとされています。
それに対して、小児・乳児の心停止は「呼吸原性の心停止」が多いと言われています。

つまり呼吸のトラブルから、呼吸停止となり、心停止に至るという経過です。

なぜ、子どもに呼吸のトラブルが多いかというと、成長発達の過程が関係しています。
人体の発生、つまり胎児からの成長の過程を考えた時に、心臓はごく初期のうちに形成され、母胎内でも立派に機能しています。

妊娠6週になる頃には、エコーで赤ちゃんの心臓の動きを見ることもできますよね?
それに対して呼吸器系は相対的に未熟で、母体から生まれ出た後の第一声から始まり、そこからようやく機能しはじめます。

子どもは循環器系に比べて呼吸器系が未熟なため、呼吸器系のトラブルが多い。

ゆえに体の成長発達が完成する時期、つまり思春期までは、原因のわからない子どもの心停止に際しては呼吸器系のトラブルに起因するというのが蘇生科学の考え方です。

呼吸のトラブルによる心停止、つまりそれは「低酸素」による心停止です。
その機序を考えると...

呼吸窮迫(こきゅうきゅうはく) → 呼吸不全 → 呼吸停止 →
 低酸素血症 →徐脈 → 低酸素血症による無脈性電気活動(PEA) → 心静止

という経過が予想されます。



【2.AEDは何をする機械か?
また、AEDが判断できることは、①~⑥のうちいくつあるでしょうか?】


・AEDは何をする機械か?⇒AED(体外式除細動器)は、心臓の細動を取り除く機械です。

細動というのは、細かな震えであり、心臓の痙攣。
心室細動や無脈性心室頻拍の様に震えている心臓に対して、その震えを止めるために、強いエネルギーでショックをかけ、一旦心臓を止めてあげる機械。
(その後、心臓が元に戻るかは、その心臓が持っているエネルギー次第。)


・AEDが判断できる事はいくつあるか?⇒1つもない。

①反応がある/ない⇒分からないので、AEDを使用する者が確認しなくてはいけない。
②呼吸がある/ない⇒分からないので、AEDを使用する者が確認しなくてはいけない。
③脈拍がある/ない⇒分からないので、医療従事者であれば、AEDを使用する者が確認しなくてはいけない。

④心臓が正常に動いている ⑤心臓の動きが止まっている⇒正常に動いているのか、止まっているかの判断はできない。
 わかるのは、心臓の電気信号がどの波形に分類されるかであり、心停止であることを前提にショックが必要な波形か不要な波形かの判断のみ。

⑥心肺蘇生法が必要かどうか⇒上記の事より、傷病者がどんな状況かは特定できないため、必要かどうかはわからない。



【3(医療従事者向け設問).心停止の種類を4つ挙げてください。
そのうちAEDが「ショックが必要」と判断する心停止はどれでしょうか?】


心停止というと、心電図モニターがフラットな状態である「心静止」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、心停止の種類は4つあります。

1)心室細動(しんしつさいどう):大人に多い心原性の心停止
2)無脈性心室頻拍(むみゃくせいしんしつひんぱく)
3)無脈性電気活動(むみゃくせいでんきかつどう):子供や院内で多いとされる心停止
4)心静止(しんせいし)



AEDが「ショックが必要」と判断する適応波形は、心室細動と無脈性心室頻拍の2つのみ。



※余裕がある方は次のような状況も考えてみてください。


呼吸原性心停止の子供や傷病者にAEDを装着したらAEDはどんな指示を出すでしょうか?
(この時の心電図波形が何かを考えてみてください)


また呼吸原性心停止が疑われる子供や傷病者に、胸骨圧迫のみのCPRをした場合の効果についても考えてみてください。