気道異物除去の方法について
交通事故より多い食べ物による窒息死。
厚生労働省によると、2022年に食べ物による窒息事故で死亡したのは4696人。
2023年の交通事故死が2678人(警察庁)なので、交通事故の1.8倍もの人が食べ物で亡くなっているようです。
これらは高齢者だけの問題ではなく、「リンゴのすりおろし」や「うずらの卵」など、乳児・小児の窒息事故のニュースも絶えません。
酸素の取り込みは気道という1本の通り道しかありませんので、気道に物が詰まってしまえば、どれだけ元気な人でも【分単位】で死んでしまいます。
そこで、喉にモノを詰まらせた時の救命処置について取り上げてみます。
背中を叩くのは皆さんご存知だと思います。
日本では、肩甲骨と肩甲骨の間を掌で強く叩く「背部叩打法」を試み、効果がなければ「腹部突き上げ法」(ハイムリック法)を推奨しています。
ただし、乳児の場合は腹部臓器損傷の危険性が高いため禁忌とされており、代わりに「胸部突き上げ法」が推奨されています。
妊婦、高度肥満者も同様に「胸部突き上げ法」が良いとされています。
さて、ここまではご存知の方も多いかもしれません。
ただ、この方法で異物が取れず、意識を失い反応がなくなった場合の対応についてはどうでしょうか?
事故の報告書を見ても、反応が無くなった後も同じ方法で気道異物の除去を試みているケースを見かけます。
大切なPOINTは、【窒息の解除方法は、反応の有無で方法が変わる!】ということ。
反応が無くなったら、床に寝かせ(乳児の場合は固く平らな場所に寝かせ)CPR(心肺蘇生法)を実施。
ただし、気を付けたい点は、心停止しているから「CPR」をする訳ではないこと。
気道異物除去の方法が変わっただけです。
もちろん、酸素が尽きてしまえば心停止になりますが、気を失った直後であれば、脈は触れる可能性の方が高いです。
ここを誤解していると、胸を押して傷病者が痛がったり、反応があったら止めてしまいますよね?
腹部突き上げ法も痛くたっておこないます。
同様にCPRで胸を強く押し、もし痛がる反応があったとしても実施します。
人は、意識を失う事で咽頭の筋肉は緩み、完全に気道が閉塞していたものが、部分閉塞に変わる可能性があります。
それに加え、胸骨圧迫で30回も胸を押せば、腹部突き上げと同程度の力で異物の排出に役立つ可能性がある。
そのため、一般的なCPRとは違い、人工呼吸を行う前には傷病者の口を開け、異物を探すというアクションが加わります。
異物が確認でき、容易に取り除けるようであれば取り除き、異物が確認できなければCPRを続ける。
この切り替えがとても大切になってきます。
緊急事態の際はパニックになり、自宅の住所さえ言えなくなってしまうという方は少なくありません。
医療従事者に限らず、保育士さんや教職員などの救護義務者、守りたい家族がいる方であれば、是非身に付けておきたい知識と技術ではないでしょうか?