BLS札幌について②【PEARS® プロバイダーコース】


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弊会では、AHAの最新プログラム【PEARS® 】をBLS横浜と協力し開催しております。
ただ、北海道ではこのPEARS®(ペアーズ)プロバイダーコースの開催が圧倒的に少ないためか、【PEARS® 】をご存知ない方がとても多い印象を受けます。
弊会でのBLS講習の際は少しお話をさせていただきますが、その魅力がうまく伝えきれていないのを感じるため、今回はブログに書こうと思いました。

心停止の予兆にいち早く気づき、早期にその芽を摘むための救急対応プログラム

この【PEARS® 】、アメリカ心臓協会(AHA)が、BLS/ACLS/PALSに次いで世に出した、最新の救急対応プログラムです。

BLSやACLSは主に心停止後の対応を学ぶのに対して、【PEARS® 】は心停止に至る危険な徴候を見極め、心臓が停まる前に早期介入をして心停止を防ぐのを目指したプログラムと言えます。

さて、入院中の患者さんが突然目の前で倒れたと思ったら心停止だった!!
院内でこのようなケースはどのくらいありますか?

おそらく、この心停止は心室細動などの心原性心停止が予想されますが、院内の心停止の約7~8割は、呼吸器系または循環器系の病状が悪化し重篤となった結果に起こるものです。
突然発生した心停止ではありません。

しかも、心停止の約8時間前にはきちんとバイタルの異常があらわれているにも関わらず、それらが見落とされて命を落としています。
そうです、7~8割の心停止は防ぎ得た心停止と言われています。

24時間体制で患者さんの状態を看ている医療従事者といえば…?
看護師さんですよね?

BLSやACLSでも救命の連鎖について学びますが、院内の救命の連鎖の一番初めの輪、覚えていらっしゃるでしょうか?

弊会では必ず取り上げる部分なのですが、小児も成人も虫眼鏡のマークが描かれ【早期認識および予防】なのです。

もちろん、最悪の事態に備えBLSの知識や技術を身に付けておくことは医療従事者、プロとしては当然のこと。
ですが、院内に関しては心停止をも予防できるのです。

心停止になってからの介入では予後が不良であることは、既に分かっている事実。
であれば、心停止を待つのではなく、心停止の予兆にいち早く気づき早期にその芽を摘む。
心停止にさせないことの方が重要ではないでしょうか?
そして、そこに特化した内容プログラムが【PEARS®(ペアーズ)プロバイダーコース】と言えます。

アセスメント手法はすべての患者/傷病者に使える普遍的なテクニック

特徴としては、生命危機状態にある実際の患児の動画を見て、観察・評価の訓練を行う所にあります。

こんな症状や徴候がある等とテキスト上で学ぶのではなく、実際の映像を見て、意識状態や表情、呼吸、皮膚色などの第一印象から緊急性を判断していきます。

そして「何かおかしい…」と感じたら、バイタルサインを含めた A-B-C-D-E アプローチで、その「何か変」を具体的に探り問題点を見極め言語化していきます。

このような観察やアセスメントの視点を学び、緊急性の高い兆候、重症な徴候を見逃さない訓練を繰り返していきます。

PEARS® 】は小児に特化した内容だと思われている方も多いかもしれません。

もちろん、PEARS® コース中、映像症例で示されるのは小児(患児)ですが、アセスメント手法は成人患者を含め、すべての患者/傷病者に使える普遍的なテクニックです。

院内であっても、医師がいつでも近くにいるとは限りませんよね?

緊急時、目の前の患者さんの状態を的確に医師へ報告できていますか?

スムーズな治療が受けられるよう、先を見越した準備はできていますか?

看護師に出来る処置は限られていますが、その場でできる適切な介入(安定化)をし、医師へスムーズにバトンを渡せていますか?

これも大切な救命の連鎖です。

また、講習の最後では、学んできたことをシミュレーショントレーニングで実践していただきます。

トレーニングセンターによってはシミュレーション訓練を省略する場合もあるようですが、

BLS横浜/BLS札幌では、このシミュレーショントレーニングに力をおいた【PEARS®(ペアーズ)プロバイダーwith シミュレーション】としてコースの展開をしております。

臨床で、これら学んだアセスメントや介入がどのように生かされるのか?どのように対応していくのが良かったのか?臨床の疑似体験をしていただきます。

個人的には、この最後のシミュレーショントレーニングこそが、今まで学んできた知識をアウトプットできる場であり、一番気づきの多い部分と感じております。

RRS(迅速対応システム)Rapid Response Systemについて

さて、少し話は変わりますが、上記に関連しJRC蘇生ガイドライン2020にて、「院内心停止の発生や院内死亡率を減少させるために、RRS(迅速対応システム)Rapid Response System(Rapid Response Team、RRT/ Medical Emergency Team、/MET)の導入を考慮することを提案する」ことがエビデンスと共に提示されました。

そして、導入した病院で徐々にその効果が実証され、2022年4月、令和4年度診療報酬改定では、このRRS(迅速対応システム)が急性期充実体制加算の要件となりました。

日本蘇生学会が実施した調査では2023年には72.7%がRRSの導入を行っているようですが、皆さんのご施設では導入されていますか?

実は、2022年の診療報酬改定では、RRS(迅速対応システム)は急性期充実体制加算の要件でしたが、RRS(迅速対応システム)は大規模な急性期病院だけが必要とするものではないことは明らかなので、令和6年度診療報酬改定では、急性期充実体制加算が病床数の少ない施設にも適応されるようになりました。

今は、心停止後に時間と労力をかけて対応するのではなく、心停止予防に重点を置き、院内で心停止させない【心停止予防】へと変化しつつあります。

いち早くPEARSを学ぶことで、確実に視野は広がり、患者さんの現在の状態が立体的に見えてきます。

今回は看護師さんにフォーカスして必要性を述べてきましたが、異常の早期認識と安定化への適切な介入というところでは、看護師に限られるものではありません。

職種によってできる範囲は違いますが、医師へ引き継ぐまでの看護師や救急隊員はじめ、救急隊へ引き継ぐまでの養護教諭や保育園看護師などには特にお勧めしたいコースと考えております。

もちろん、これらの職種だけに限らず、このアセスメント能力は個人的にも大いに役立つ視点が多くあります。

自分の大切な家族の様子がおかしい時、今はどのような状態にあるのか?(明日まで様子を見て良い状況なのか?早急に病院へ受診した方が良いのか?119番しないと間に合わないレベルなのか?)が根拠を持って理解できるのは大変大きいと思います。

さて、魅力を少しでもお伝えしたいと思って書いてみましたが、まだ認知度が低い【PEARS® 】1人でもご興味を持って下さる方がいれば大変嬉しく思います。

● 札幌で アメリカ心臓協会 AHA 救命処置トレーニング講習を開催 BLS札幌

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